限られたリソースを基に企業の利益を最大化するには、生産体制の最適化・効率化を実現して市場のニーズに素早く対応していくことが必要です。「生産管理」は、生産体制の最適化・効率化を実現するための基幹業務です。生産管理の機能と、生産管理システムのメリットはなぜ必要かを紹介していきます。
【目次】
1 生産管理とは?
生産管理とは、製品を生産する上で「QCD」(品質:Quality、原価:Cost、納期:Delivery)の最適化・効率化を図るために必要な基幹業務です。製造業の生産形態と機能は、大きく分けて下記のような分類になります。
生産形態
需要予測や販売計画を基に見込生産を行う
顧客や消費者からの注文に応じて受注生産を行う
機能
製品を納期に間に合うよう生産するために必要な資材の調達、工程ごとの標準リードタイムの設定などを整理する「生産計画」を作成する機能
生産の現場を適切にコントロールして、生産活動に伴うさまざまな状況に対応する機能
これまでにも、生産管理は製造業にとって当然の業務として行われてきました。日本の製造業では「品質」と「納期」が重視され、「生産工程そのものの管理」が中心的な役割と認識されています。
しかし、グローバル化が進み価格競争が激化する中、「コスト」や「スピード」に重点を置いて資材の調達・購買、あるいは人的リソースの確保、製品開発までを含めた一貫生産という観点から、生産管理の重要性が高まっています。
2 生産管理はなぜ必要?メリットは?
「この新製品はだいたいこのぐらい売れるのではないか」といったどんぶり勘定で、安定して利益を上げられる企業はほとんどありません。売れるかどうか分からない製品を造るために資金をやみくもに投資していては、とても経営は維持できません。生産業務の効率化、その先の顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)を向上させるためには、不透明な工程を廃して正しい生産管理を行うことが必要になってきます。
(1)事前の検証
メリットの一つとして挙げられるものが、需要予測です。マーケティングによる市場のトレンドやこれまでの受注動向を予測した上で、今後のニーズに対応した生産計画を立てることです。予測・計画を行わなければ、過剰な在庫が企業のキャッシュフローを悪化させたり、市場や顧客の強いニーズを読み取れずに商機を逸したりします。事前の生産管理によって、必要なだけの資材調達と製品の生産を進めていくことが大切です。
(2)無駄の抑制
生産の現場では、細かい生産工程が数珠つなぎになっています。どこかの工程が遅れたり、特定の箇所で作業が滞ったりすれば、納期の遅れにつながってしまいます。時間の浪費は、企業の貴重な費用の無駄遣いにほかなりません。生産管理によって「どの工程・どの業務の負荷が高いのか(低いのか)」といった情報を一つずつ管理していくことで、生産業務全体がスムーズに流れるようになります。同時に「ヒト(人材・スタッフ)」「モノ(資材)」「カネ(資金)」といったリソースを適正に配分できれば、生産部門の最適化を図ることができ、最大限の利益を実現できます。また、特定の工程の過剰な負荷を減らすことは、ミスや不良品の発生を抑制することにもつながります。これらのムダを抑制することで、顧客からの急な追加注文や仕様の変更といったさまざまなニーズにも対応しやすくなり、顧客満足度を高めることができます。
(3)効率的な管理
需要を予測し、無駄の抑制を自社でクリアにしたとしても、現実の生産活動については想定外の事態が発生することも珍しくありません。生産管理は非常に煩雑で、他の業務と比べても負荷の大きいセクションなのです。
そこで、生産管理のシステム化を進める企業が増えています。「生産管理システム」の導入によって、これまで人の手によって行われていたさまざまな作業、手続きを自動化できます。現場の状況に関するデータもリアルタイムで共有し、それぞれの現場で不足している資材・スタッフの状況をダイレクトに把握したり、各工程の負荷を平準化したりすることで、生産管理にかかる作業が大幅に省力化されます。
3 生産管理の業務フロー
従来、生産管理の範囲は、需要予測から生産計画、生産、在庫、受注(出荷)といったプロセスが一般的でした。しかし、近年では「製品寿命:プロダクト・ライフサイクル」が急速に短くなっています。製造業は市場のニーズに対して、できるだけ短期間で素早く製品を投入することが求められています。
生産管理が担う機能も、生産そのものに関する業務だけでなく、それ以前の製品開発にかかる業務や「企画・立案」「設計」といった段階も含めて管理するケースが増えています。
生産管理の一般的な業務プロセス
在庫管理の具体的な工程は「入庫」「出庫」「棚卸し」の3つです。それぞれにどのような作業があるのかを紹介します。
生産管理の主なプロセスは以下になります。
需要予測
市場の自社製品に対するニーズや価値について、さまざまなマーケティング手法を基に分析。製品ごとに「どれぐらい売れるのか」を予測して、生産量や生産時期を決定するための生産計画に生かします。
生産計画
製品の生産体制を構築するベースとなる計画。工場の生産能力などを加味しながら、生産量、生産のタイミング、納期、必要なスタッフの確保などを整理します。
資材所要量計画
製品の生産に必要な資材の必要数量の計算。月次→週次→日次といったより厳密な期間に細分化し、計算の精度を高めていきます。
調達・購買計画
足りない資材については、調達・購買計画を作成して仕入先に発注。資材の調達を計画通りに管理すると同時に、製造コストに直結する資材をより安価に仕入れできる方法を、資材の価格動向や仕入先のリサーチなどで随時更新します。
製造指図
計画表に基づいて生産を開始。どの製品がいつ、どれだけの量が必要であるかが示されている製造指図に従って生産を行います。
生産統制
生産体制の工程や能率を管理。品質や納期が守られるように、生産に関わる業務を適切にコントロールします。
品質管理
完成品の検証。要求された規定の水準に適しているかを確認します。製造途中の段階でも、仕入れた資材や仕掛品などを都度チェックします。
工程管理
生産の進捗を管理。工程ごとにリードタイムを設定し、管理することで納期の遅れまどの事態を回避します。歩留まり率の向上を目指して、各工程での作業の改善も実施します。
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まとめ
生産ビジョンとプロセスを合致させなければ市場に取り残される
このように、生産管理は「ヒト(人材・スタッフ)」「モノ(資材)」「カネ(資金)」といったリソースを適切に管理し、市場や顧客に合わせた対応をするための幅広い管理能力が求められます。
今までのような受注→生産というメイド・イン・ジャパン流も確かに大切ですが、市場や顧客のニーズが多様化するグローバル経済に対応するためには、中長期的な生産ビジョンと、それを支えるプロセスの効率化がなくてはなりません。他業務に横断する工程のデータを集積し、先見性のある管理を行い、一貫生産を行うことで、自社の競争力をより高みへと押し上げなくてはならないのです。