在庫は企業にとって利益を生み出す製品となる大切な資産です。しかし、在庫は現金化されて初めて、現実の利益になります。いつ売れるのか分からない大量の在庫は経営を圧迫するリスクにもなります。企業の在庫を適切に管理する在庫管理の機能について紹介します。
【目次】
4 テクノプロ・IT社のERPのご紹介
まとめ:効率的かつフレキシブルな管理が将来の企業力アップに欠かせない
1 在庫管理とは?
自社が保管している製品などについて「名称・数量・単価・合計数量・合計金額」などをリスト化して把握すること、そして在庫の数量が経営や事業の状況に応じて適切になるように管理することが在庫管理です。
在庫管理では取り扱う製品ごとに売れ行きや滞留状況を常にチェックする必要がある他、返品・転売、在庫の陳腐化といったさまざまな処理も発生します。そのため、最近では手作業による処理ではなく、在庫管理システムを導入するICT(Information and Communication Technology) 化によって、より効率的に確実かつ在庫管理を行う企業が増えています。
2 在庫管理はなぜ必要?メリットは?
さまざまな業種・業態によって定義は異なりますが、主な業種での在庫とは、以下のことを指します。
小売業・卸売業・サービス業:
自社倉庫や店舗のバックヤードに保管している製品のこと
製造業・建設業:
製品を造るための木材・紙・金属・電子部品などの素材、製品にするために生産途中の仕掛品、まだ出荷されていない完成品の3種類
経営者の中には、自社が抱えている在庫に対して「商売のために必要なモノ」という意識から、意外に在庫の管理に甘い人もいます。確かに在庫はビジネスで欠かすことのできない大切な資産ですが、しかしながら、そのまま保管してある状況は利益を生み出すものにはなりません。
在庫を仕入れたり、あるいは完成品を生産したりする段階で、その都度、利益ではなく支出が先行します。倉庫で保管している期間は製品の品質を維持するための設備やスタッフにかかる人件費、冷房などにかかる光熱費も発生します。
「自社の在庫がきちんと利益につながっているか」「いつまでも倉庫に滞留していないか」「在庫の数は市場動向を反映しているか」などといった在庫を取り巻く状況を管理することは、無駄な支出の抑制するためにも欠かせません。在庫を効率よく売り上げにつなげることが企業の利益率を大きく向上させるポイントです。まさに「在庫管理は経営そのもの」と言っても過言ではありません。
(1)経営のスリム化につながる
(2)市場の動向を予測できる
(3)経営状況の「見える化」
(4)企業の信用度がアップする
(1)経営のスリム化につながる
在庫管理の意識を持つことにより、その後の在庫の動きをチェックして「この数の発注は必要だったか」「この数の在庫を売りさばくにはどのぐらいの時間が必要か」といった、仕入れに対する自己分析を行うための最も現実的なデータとなります。
先述の通り、在庫は企業の資産ですが、在庫は売り上げよりも支出が先行します。必要以上の在庫を抱えることは無駄な支出を増やしている、つまり企業の資金繰りを圧迫する大きな要因の一つになります。在庫を適切に管理することで企業の資金繰りをスムーズにし、経営のスリム化につながります。
(2)市場の動向を予測できる
在庫を管理することで、自社の製品が「いつ、どこへ、どれだけの数が流れていくのか」を知ることができます。季節や顧客ごとのニーズ、そして今よく売れている製品は何かを知ることで、市場の動向も見えてきます。
顧客が必要としている製品を先んじて確保することで、売れ筋の製品を切らさず、商機をしっかり捉えることもできます。同時に、顧客からも「この企業は期待に応えてくれる」といった顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)を得られて、評価の向上につながります。このようなスキームを続けることで、自社はもちろん顧客からの情報集約が進み、よりスピーディーかつ柔軟な経営計画を行うことができるのです。
(3)経営状況の「見える化」
在庫は企業にとって重要な資産です。在庫の売れ行きや製品価値は、そのまま企業の経営に重大な影響を与えます。在庫はいつまでも同じ価値を維持できるとは限りません。例えば、流行のアニメグッズであれば、ブームが去ってしまえば製品は陳腐化して、急速にその価値を落としてしまいます。
在庫の仕入れ時期や数量をきちんと管理して、一定の期間を経過した在庫については販売促進キャンペーンを実施したり、廉価販売したり、返品、同業者への転売といった在庫処分を検討していく必要があるでしょう。
場所も量も限られた在庫をコントロールすることで、最大限の利益を得る。また不要な在庫を効率的に手放すことで、経営リスクを軽減する。これらを徹底することで、経営状況の見える化が可能になります。
(4)企業の信用度がアップする
在庫は常に増減しているので、定期的に帳簿上の在庫を実際の状況と突き合わせする「棚卸し」を行う必要があります。在庫の残高を把握していなければ、決算で正確な利益計算を行うことはできません。在庫管理は、正確な決算書を作成するための不可欠な要素といえます。
決算書は、企業の経営状況を明らかにしてくれる重要な判断材料です。適切な在庫管理に基づいた決算書は運転資金を融資してくれる金融機関をはじめ、取引先、税務当局から高い信用度を得ることにもつながります。
3 在庫管理の方法
在庫管理はどのように行えばいいのでしょうか。主な方法は以下になります。
「5S」マニュアルの作成:
在庫は企業の資産そのものですから、倉庫やバックヤードでの保管にあたっても紛失や毀損しないように、いわゆる業務改善のための「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ〈スタッフの教育))といったマニュアルの作成は重要でしょう。
データでのリスト作成:
在庫の流れ、数量、コンディション、今後の取り扱いといったデータ上の管理方法について、最も簡便な方法はExcelを使ってリスト化し、在庫が動くたびに随時入力していく方法です。入出庫のたびにスタッフの手によって一つずつ処理していくことになります
ミスの防止:
全て手作業で行う場合、入力作業の労力、処理ルールの統一を図るためのスタッフ研修も必要になります。毎日大量に入出庫する在庫を処理するので、入力ミスは必ず発生します。自社の在庫管理に合わせた入力フォーム・ひな形の作成も必要です。
在庫管理業務を経験豊富なベテランスタッフなどが担うことは自社の在庫の流れを感覚的に把握したり、ミスや不正行為を早期に発見したりする点で、確かにメリットもあります。しかし、特定の人材に頼りすぎる業務フローは、慢性的な人材不足の時代にあって、業務の安定化・効率化の観点からも、改善の余地があります。
在庫管理は企業にとって重要な基幹業務あるため、近年はシステムを導入してICT化を進める企業が少なくありません。ポータブルデータターミナル(ハンディーターミナル)と連携してバーコードを読み取るなど、機械端末の導入が最も多いでしょう。また、在庫管理のスピード化を図るためにWMS(Warehouse Management System、倉庫管理システム)といった他のシステムとも連携しながら製品の入出庫管理、検品、ピッキング、梱包、棚卸しといった在庫管理に伴う一連の業務を、リアルタイムに処理できる体制を整えている企業も増えています。企業競争力を確保する観点からも、在庫管理業務のシステム化が望ましいといえるでしょう。
在庫管理の業務プロセス
在庫管理の具体的な工程は「入庫」「出庫」「棚卸し」の3つです。それぞれにどのような作業があるのかを紹介します。
入庫
届いた製品(入荷した製品)を倉庫や保管場所に入れること。小売業の場合、入荷した製品をそのまま店頭に並べる場合もあるので、入庫が発生しないこともあります。
入庫にあたっては伝票・データと照合して、入荷した製品の名称・数が一致しているか、また製品の状態に問題はないかをチェックします。その上で指定の場所に保管します。出庫の際に無駄な時間がかからずピッキングしやすいように、どの場所に何があるのかを明確にするロケーション管理もポイント。全ての作業が完了したら、入荷日や製品情報などをデータ入力します。
出庫
製品を倉庫や保管場所から出すこと。注文に応じた製品を保管場所からピッキングして、製品の状態を検品。問題がなければ梱包して伝票を貼り、発送します。一連の作業をシステム化してデータ管理することで人的ミスを減らし、業務のスピードと確実性が向上します。
棚卸し
定期的にデータ上の在庫と実際の在庫の状況を突き合わせてチェックすること。在庫は日々出たり入ったりしているので途中で正しく処理されていないケースもあります。在庫は現金化できる資産でもありますから、不正行為が発生しているリスクもあります。例えば、スタッフによる製品の横流し、窃盗、仕入先が注文した数をごまかしているといったケースもあり得ます。
4 テクノプロ・IT社のERPのご紹介
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製造業などの欠かせない基本知識をおさらいしましょう
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まとめ
効率的かつフレキシブルな管理が将来の企業力アップに欠かせない
経営にとってメリットともリスクとも受け取れる「在庫」の管理は、効率性と市場ニーズに合わせて、フレキシブルに扱わなくてはなりません。今までの知見を生かして経験豊富な人員による管理もとても大切ですが、効率化やグローバル化が進み、よりスピーディーな対応が求められる中、ICTによる適切なシステム化を行うことが大切となってきているのです。